Shopifyでストアを運営していると、「テーマを変えたいけど、売上が下がったらどうしよう…」「デザインを改善したいが、本当に効果があるのか分からない」と悩むことはありませんか?
そんな課題を解決してくれるのが、Shopify公式のAIシミュレーションアプリ「SimGym」が2026年3月、ついに日本でも一般利用が可能になりました!
SimGymを使えば、AIが仮想の買い物客としてストアを巡回し、変更を公開する前にその効果を検証できます。
本記事では、SimGymの概要やプラン、そして実際にSimGymを使ってテーマ分析・比較テストを行った体験レポートをお届けします。ストア改善のヒントをお探しの方は、ぜひ最後までご覧ください。
SimGymとは何か
SimGymは、Shopifyが提供するAIシミュレーションアプリです。Shopify Winter '26 Edition(通称:RenAIssance)で発表され、ECサイトの変更を本番公開前にシミュレーションできる画期的なツールとして注目を集めています。
SimGymの仕組み
SimGymの核となるのは、「AIショッパー(AI買い物客)」と呼ばれるAIエージェントです。Shopifyネットワーク全体の数十億件にも及ぶ取引データから学習しており、実際の顧客と同じようにストア内を回遊します。
SimGymの基本的な流れは以下の3ステップです。
- 比較するテーマを選択 — テーマのバリエーションが、現在のテーマと比較されます。
- シミュレーションを開始 — AI買い物客が割り当てられ、タスクを完了し、テーマに関するフィードバックを共有します。
- 結果を確認する — 今後の方針決定に役立つインサイトとともに、結果が要約されます。
SimGymで何ができるのか
- テーマ分析:公開中または未公開のテーマをAI買い物客に巡回させ、ホームページ・商品ページ・コレクション・カートなどの各エリアについてフィードバックを取得
- テーマ比較(ABテスト):2つのテーマを並べてAIで比較し、どちらがコンバージョン率が高いかを検証
- 改善提案の取得:AIショッパーがストアのUXの問題点を具体的に指摘し、改善のヒントを提供
従来のA/Bテストとの違い
従来のA/Bテストでは、テスト期間中に一部の顧客に不完全なデザインを見せてしまうリスクがありました。また、トラフィックの少ないサイトでは有意差が出るまでに時間がかかり、その間に機会損失が発生することも少なくありません。
SimGymを使えば、本番環境にデプロイする前にAIの仮想環境内でテストを完了させることができるため、実際の顧客に悪影響を与えることなく検証を行えます。
SimGymのプランと料金体系
SimGymは無料でインストールできますが、シミュレーションの実行にはクレジット制の従量課金が採用されています。以下に料金体系をまとめます。
料金の仕組み
- インストール費用:無料
- 初回無料クレジット:アプリ導入時に5回分の無料シミュレーションクレジットが付与されます
- クレジット消費:テーマ分析(ライブテーマ分析)は1クレジット、2つのテーマ比較は2クレジットを消費します
- 追加購入:クレジットを使い切った後は、1クレジットあたり10ドルで追加購入が必要です
利用時の注意点
- 管理画面は英語:SimGymの管理画面やAIショッパーのフィードバックは基本的に英語で表示されます。日本語対応はまだされていないため、翻訳ツールの併用をおすすめします。
- リサーチプレビュー版:2026年5月時点ではリサーチプレビュー(試験版)の段階です。シミュレーション結果の正確性については自社で検証する必要があります。
- クレジットの浪費に注意:「とりあえず回してみる」という使い方はクレジットの無駄遣いにつながります。事前に仮説を立ててからシミュレーションを実行することが重要です。
SimGymを使ってみた【実践レビュー】
ここからは、実際にSimGymを使ってストアのテーマ分析とテーマ比較(ABテスト)を行った体験をレポートします。画像を交えながら、操作の流れや得られた結果を詳しく解説します。
管理画面の確認
SimGymをインストールすると、Shopify管理画面のアプリ一覧からアクセスできます。管理画面のトップには、シミュレーションの仕組みが分かりやすく3ステップで表示されています。画面右上には「5回の無料シミュレーション」の残数と「シミュレーションを作成する」ボタンが配置されています。
シミュレーションの作成と開始
「シミュレーションを作成する」をクリックすると、シミュレーションの種類を選択するモーダルが表示されます。今回はまず「テーマを分析」を選択しました。「ライブテーマ分析」という名前を付け、推奨事項のフォーカスエリアとして「ホームページ」「商品ページ」「コレクション」「カート」の4つすべてにチェックを入れました。
こちらは、「商品ページだけを分析したい」といったケースでは「商品ページ」のみにチェックを入れるようにしましょう。
続いて、分析対象のテーマを選択します。テーマ選択のドロップダウンから、分析したいテーマを選択しましょう。
今回はライブテーマを選択します。
設定が完了したら、画面下部の「シミュレーションを開始」ボタンをクリックします。テーマ分析の場合、シミュレーション費用は1クレジットです。
テーマ分析中の様子
シミュレーションを開始すると、ステータスが「アクティブ」に変わり、AI買い物客がストアを巡回し始めます。進捗バーでリアルタイムに分析の進行状況を確認でき、今回の分析は10分ほどで完了しました。
分析中でも、すでにAI買い物客からのフィードバックがリアルタイムで表示されます。「Adeline」という名前のAI買い物客が、商品を調べたり、カテゴリを探索したりしている様子が確認できました。
分析結果の確認
分析が完了すると、4つのカテゴリに分類された改善提案が表示されました。内容は以下の通りになります。
- Recommendations(推奨事項):カートレベルの利用規約チェックボックスの削除・延期、意図に基づいたエントリーポイントの強化など
- Site Navigation(サイトナビゲーション):トップレベルメニューのリンク修正、カテゴリ分類とローカライゼーションの明確化など
- Product Discovery(商品発見):日本語対応の検索関連性の修正、フィルター付きコレクションの作成、在庫状況の表示など
- Trust Signals(信頼性シグナル):レビュー星評価の表示、プレス掲載・認証バッジの統合、配送ポリシーの明示など

AI買い物客のフィードバック
分析結果の下部では、各AI買い物客のフィードバックを確認できます。AI買い物客はそれぞれ異なるペルソナを持っており、リサーチャー型の「Adeline」は商品を徹底的に調べ上げ、複数のカテゴリを探索していることが分かります。
AI買い物客の一覧画面では、複数のAIショッパーがそれぞれ異なるページや商品を閲覧した結果が一覧で表示されます。Noa、Alicia、Samantha、Marshall、Clayton、Kristinaなど、多様なペルソナの買い物客がストアを巡回した結果をひと目で確認できます。
AI買い物客の詳細分析
各AI買い物客をクリックすると、その詳細な分析ページに遷移します。例えば「Noa」は「プレミアムなベビートラベルギアを探しているショッパーで、素早くオプションを確認し決断する」というペルソナが設定されています。
詳細画面では、総所要時間(1分52秒)、クリック数(10回)、閲覧ページ数(6ページ)、カート合計金額(¥0.00)などの定量データが表示されます。さらに、AIショッパーが実際にどのページを閲覧したかのスクリーンショットと、AIセッションインサイトも確認できます。
アクティビティログでは、AIショッパーが各ページでどのように行動し、何を考えたかが時系列で記録されています。「少し考えました…」という表示とともに、商品のスペックや素材を確認している思考プロセスが確認できます。
AIセッションインサイトでは、より構造化された形で分析結果が提示されます。「うまくいったこと」「うまくいかなかったこと」「結果」「推奨」という項目に整理されており、具体的な改善アクションが明確になります。
例えば今回のケースでは、「カテゴリからの商品ナビゲーションは概ね機能した」という良い点がある一方で、「ベビーカーへは一度のクリックで遷移できなかった」「素材や商品の詳細がアコーディオン内に隠れていた」といった改善点も指摘されました。
上記の問題点が発生した箇所はどちらも意図的にアコーディオンで実装している箇所でした。
アコーディオンを使った実装は顧客の手数が増えることからSimGymでは低評価となるようです。
さらに、分析結果の詳細では、カテゴリごとに具体的な改善提案が確認できます。例えば「カートレベルの利用規約チェックボックスを削除する」「ホームページに意図ベースのエントリーポイントと信頼性シグナルを強化する」といった、実行可能なアクションが提示されます。
「カートレベルの利用規約チェックボックス」というのは、チェックアウト前に利用規約を読み利用したことを確認する意図でボタンの前に設置しているチェックボックスのことで、購入前に利用規約の把握と同意の確認を取ることで、その後のCSに繋げる意図があります。
日本のECではよく見かける施策ですが、ネガティブに評価されているので、SimGymは日本の商環境独自の施策などには有効な分析をしてくれない可能性がある点は抑えておいたほうがよさそうです。
分析結果をGemini&Sidekickで活用
SimGymの分析結果は、他のAIツールと組み合わせることでさらに効果を発揮します。今回は、ここまでの分析結果をGeminiでまとめ、その内容を元にShopifyのSidekickにテーマの調整を依頼するという活用方法を試しました。
Geminiが「今すぐ対応できるおすすめアクション」として優先度の高い改善項目を3つにまとめてくれました。
- アナウンスバーの自動ローテーションをON → 送料無料・キャンペーン情報を効率よく伝達
- 予測検索をON → 検索UXの即時改善
- 言語セレクターをON → 多言語対応の可視化
これらをSidekickに依頼すると、「3つまとめて設定しますね!」と応答し、テーマのカスタマイズを自動で実行してくれました。SimGym → Gemini → Sidekickという一連の流れで、分析から改善実行までをスムーズに行うことができます。
なお、今回分析しているテーマはDAWNベースであるため、仕様上日本語での予測検索は動作しませんが、設定上は予測検索をONにしてくれていました。
少し意地悪な気もしますが、この変更が次のテーマ分析にどのような影響を与えるのか期待が膨らみます。
2つのテーマを比較分析(ABテスト)
続いて、SimGymのもう一つの機能である「2つのテーマを比較」を使ってみました。今回は、元のテーマ(3/4リリース用)と、先ほどSidekickで調整したテーマ(SimGym検証用)を比較しています。比較分析のシミュレーション費用は2クレジットです。
約26分間の分析後、驚きの結果が出ました。
バリエーションテーマ(Sidekickで調整した方)のカート追加率が45.57%高いという分析結果です。
「バリエーションは、現在のテーマよりも総合的なパフォーマンスが優れていました」とのサマリーが表示されました。
それぞれのテーマに対する推奨事項やうまくいったことも並列で表示されます。
テーマ比較でも、テーマ分析と同様に買い物客のフィードバックやAI買い物客ごとの詳細インサイトを確認できます。各AIショッパーのクリック数やページ閲覧数、カート合計金額などが比較形式で表示されるため、テーマ変更によるユーザー行動の違いが明確に把握できます。
ここまで読んでいただいてお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、テーマの比較の項目で、うまくいったことの項目に先ほどSideKickに行ってもらった調整に関する記載が一つもありませんでした。
にも関わらず、カート追加率が45%も向上しています。
分析結果で確認できたAI買い物客の人数がどちらのテーマもそれぞれ150人程度だったことや、統計学的には許容できないレベルの揺れです。
各テーマを分析したAI買い物客のうち、カートに商品を追加しているAIの行動を確認しましたが、テーマの差異による優位な行動変化が見られなかったことから、カート追加率の45%はそのテーマを分析したAIの特性による差異であると考えられるため、カート追加率についてはあくまで参考程度と考えることをおすすめします。
その他の分析結果についてもあくまでAIによるシミュレーションであることを念頭に活用し、実際のストアでの効果検証も併せて行うことをおすすめします。
まとめ
本記事では、Shopify公式のAIシミュレーションアプリ「SimGym」について、概要から実践レビューまでを詳しくお伝えしました。改めてポイントを整理します。
- SimGymはAI買い物客がストアを仮想巡回し、公開前に変更の効果を検証できるアプリ
- 無料インストールで5回分の無料クレジットが付与され、手軽に試せる
- テーマ分析では、Recommendations・Site Navigation・Product Discovery・Trust Signalsの4カテゴリで改善提案が得られる
- 2つのテーマ比較(ABテスト)で、カート追加率の変化を定量的に比較できる
- GeminiやSidekickと組み合わせることで、分析→改善→再検証のPDCAを効率的に回せる
- AIによるリサーチは日本の商環境特有の施策は評価しない可能性が高い
- 現在はリサーチプレビュー版のため、分析結果を鵜呑みにせず、実際のデータと照合して活用することが大切
SimGymは、感覚や経験だけに頼らずデータに基づいたストア改善を実現するための強力なツールです。まだリサーチプレビュー段階ではありますが、5回分の無料クレジットで気軽に試すことができますので、まずはテーマ分析から始めてみてはいかがでしょうか。
ストア改善のPDCAをより高速に、より確実に回していくために、ぜひSimGymの活用を検討してみてください。