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Shopifyお客様アカウント徹底解説|新しいお客様アカウントの機能と従来機能を比較

Shopifyでは2023年から「新しいお客様アカウント(Customer Accounts)」が提供されています。
パスワードレスログインやB2B機能との統合(Plusプランのみ)など様々な新機能を搭載する反面、何らかの理由で「従来のお客様アカウント」を利用し続けているマーチャントも多いのではないでしょうか。
そんな「新しいお客様アカウント」ですが、2025年5月のShopify Editions Summer '25のアップデートなどでさらなる機能が追加されたことにより、より多くのマーチャントで導入しやすくなりました。
本記事では、「新しいお客様アカウント」のアップデートでどう変わったのか、また新旧アカウントの機能を比較し、どのようなメリットや課題があるのかをご紹介します。

目次

新しいお客様アカウントの機能と特徴

Shopifyの「新しいお客様アカウント」は、利便性とセキュリティを両立した次世代型アカウント機能です。
以下のような機能と特徴があります。

  • パスワードレスログイン:メールアドレス宛の6桁コード(OTP)で認証
  • 再購入・返品機能:再購入ボタンや返品リクエストボタンを注文ページに設置
  • 各種情報の一括管理:注文履歴・再購入・保存済み決済情報の管理(Shopify Plusプランのみ対応)
  • B2B機能の統合:企業顧客の注文管理や見積もり機能(Shopify Plusプランのみ対応)

これまでの導入のための課題とアップデートによる改善

これまで「新しいお客様アカウント」の利用を見送る理由としては以下のようなものがありました。

  • ドメインの問題
    ログインページ・アカウントページでドメインがshopifyのものになってしまう
  • 再購入ボタンの存在
    商品詳細ページやカートページにて注文に独自の情報を持たせるカスタマイズをしていた場合、アカウントページから直接再購入されてしまうと不都合な場合がある
  • 拡張性が低い
    従来のお客様アカウントのようにテーマからのカスタマイズができず、カスタマイズエディターからアプリブロックを追加して拡張することになります。アプリブロックは追加できる箇所が限られているため大きなレイアウトの変更ができない点や、既存の要素の削除や自由なスタイル変更はできません。
  • リダイレクトができない
    従来のお客様アカウントではテーマカスタマイズでログイン後のリダイレクトURLをカスタマイズで変更することができましたが、「新しいお客様アカウント」では未対応です。
  • SSO未対応
    外部サービスによるログイン機能が現時点では対応されていません。例えば2025年5月時点ではLINEログインなどの機能を利用することができません。

全ての問題が解決された訳ではありませんが、アップデートによって改善されたものや、今後改善の兆しがあるものについてご紹介します。

  • 独自のドメインの設定が可能に
    ログインページ・アカウントページで独自ドメインのサブドメインを設定することができるようになりました。
    設定>お客様アカウント>URL>管理から独自ドメインのサブドメインを指定できるようになりました。
    ※ドメインプロバイダー側でもサブドメインの設定が必要になります
  • 再購入ボタンの表示/非表示切り替えが可能に
    設定>チェックアウト>カスタマイズからチェックアウト・アカウントエディタを開き、歯車マークの設定箇所下部から再購入ボタンの表示/非表示切り替えが可能になりました。
  • アカウントページ用のアプリ拡張機能の登場
    Shopifyの提供するCheckout and Customer Accounts Extensibilityというチェックアウトページとアカウントページの拡張機能を提供するAPI群の中に、Customer Account UI Extensionsというアプリ拡張機能が登場しました。
    これにより、カスタムアプリや公開アプリから会員ランクやストアクレジットなどの機能拡張を行うことができるようになります。
    また、現時点では「新しいお客様アカウント」では利用できないアプリも、Customer Account UI Extensionsに対応することで利用可能になる可能性があります。

今後「新しいお客様アカウント」に対応しそうなアプリの一例としてLINEログイン機能(SSO)を利用可能にする公開アプリCRM Plus on LINEでは、新しいお客様アカウントへの対応を進めているとのことですので注目していきたいですね。

従来のお客様アカウントとの違い(比較表)

項目 新しいお客様アカウント 従来のアカウント
ログイン方式 メールOTP(パスワード不要) メールアドレス+パスワード
セキュリティ OTPで不正ログイン防止 パスワード漏洩リスクあり
B2B対応 注文管理・見積対応(Plus) 非対応
保存済み決済方法 保存可能(Plus限定) 保存不可
再購入機能 Buy Againボタンあり なし(アプリ依存)
マルチパス認証 未対応 対応(SSO可)
Liquidカスタマイズ 不可(テーマ非対応) 可能
拡張機能 アプリブロックによる拡張のみ Liquidテーマへの直接埋め込み

設定方法と導入ステップ

新しいお客様アカウントの有効化はShopify管理画面から簡単に行えます。

  1. 「設定」>「顧客アカウント」へアクセス
  2. 「ログインリンクを表示」をオンにする
  3. アカウントタイプとして「お客様アカウント(Customer Accounts)」を選択
  4. ブランドドメイン(例: account.yourdomain.com)を設定(任意)

※従来アカウントへの切り戻しも可能です。

導入時の注意点(2025年7月時点)

  • Liquidでカスタムマイページを作成していた場合は同じようなデザインの再現ができない可能性あり
  • マルチパス認証(SSO)は非対応
  • サードパーティ製アプリとの互換性に注意(特に旧テーマに依存していた機能)
  • ログイン用の認証メールは@t.shopifyemail.comから送られてくる点(2025年6月現在)
  • ログイン用の認証メールのテンプレートは変更できない点(2025年6月現在)

まとめ

「新しいお客様アカウント」は、UX向上とセキュリティ強化を目的とした重要な機能です。とくにB2B対応が求められるPlusプランのマーチャントでは早期導入の価値が高いでしょう。一方で、カスタマイズ性や互換性には制限があるため、導入にあたっては技術的な影響範囲の把握が不可欠です。

現在では、管理画面での名称が「新しいお客様アカウント」は「お客様アカウント」に、「従来のお客様アカウント」は「以前のバージョン」という名称に変わっていることからも、Shopifyからのメッセージを感じとることができます。現時点では「以前のバージョン」が廃止になるというアナウンスはありませんが、今後のアップデートでいずれ廃止になる可能性も考えられますので、そうなったときの場合に今から切り替えた場合の影響範囲や対応コスト等を確認しておくことをおすすめします。