概要
2025年7月25日、Shopifyの利用規約が更新されます。
この更新により「Shopify Network Intelligence」が導入され、マーチャントはECサイトのプライバシーポリシーへの対応が求められます。
本記事では、Shopify Network Intelligenceの概要から、有効/無効による影響、プライバシーポリシー対応とその具体的な対応ステップまでを詳しく解説します。未対応によるリスクも含めて、今EC事業者が取るべき行動をわかりやすくご説明するので、ぜひご役立てください!
目次
- はじめに:規約更新による影響と背景
- Shopify Network Intelligenceとは?
- 有効/無効化による影響
- プライバシーポリシーと利用規約の対応
- 対応期限はいつまで?
- 実際の対応フロー
- まとめ:対応しないとどうなる?
1. はじめに:規約更新による影響と背景
2025年7月25日に予定されているShopifyの利用規約の更新は、Shopify Network Intelligenceの導入を背景としています。これは、複数のマーチャントのストアデータを匿名化して集約・分析し、Shopifyが提供する様々なツールを通じて、より精度の高いマーケティング支援や顧客体験の最適化を図るための仕組みです。この更新により、マーチャントは対象機能を利用するためにNetwork Intelligenceを有効化する必要があり、それに伴いECサイトのプライバシーポリシーの記載内容や、米国・EUなど地域別の同意取得対応も求められます。Network Intelligenceを有効化しない場合、一部のアプリが利用できなくなります。
2. Shopify Network Intelligenceとは?
Shopify Network Intelligenceとは、世界中のShopifyストアから収集した匿名化データを集約・分析し、マーケティングや店舗運営の最適化に活用する仕組みです。具体的には、以下のアプリが世界中のShopifyストアから収集したインサイトを活用し、最適化されたパーソナライズやターゲティングが可能になります。
Shopify Network Intelligenceの影響を受けるアプリ
- Shopify Audiences
- Shop チャネル
- Shopify メール
- Shopify Collabs
- Shopify Search and Discovery
3. 有効/無効化による影響
この機能はShopify管理画面の設定>お客様のプライバシーから有効/無効の切り替えができます。有効/無効のどちらを設定する場合も以下のようなメリットとデメリットがあります。
有効化のメリット
Shopify Network Intelligenceを有効にすると、この機能に対応したアプリを利用することができます。これらは、他のマーチャントから得た匿名化データを活用して広告配信の最適化や検索機能の改善、メールマーケティングの効果向上を支援します。その結果、集客力や顧客体験が向上し、売上アップやマーケティングのROI改善につながる可能性があります。
有効化のデメリット
一方で、有効化すると顧客データをShopifyと共有することになり、個人情報保護法上の「第三者提供(外国にある第三者)」に当たる可能性があるため、ストアのプライバシーポリシーや利用規約にその旨を明記する必要があると考えられます。また、地域によっては同意取得やオプトアウト機能の設置など、追加の法対応が求められるため、設定や文書対応に一定の工数がかかります。
無効化のメリット
無効化することで、Shopifyに顧客データを共有しなくて済むため、プライバシー面での懸念を最小限に抑えられます。企業として顧客の個人情報保護に注力していることを打ち出しやすく、特にプライバシーに敏感な業界や海外展開前の中小規模ストアには安心材料になります。
無効化のデメリット
ただし、Shopify Network Intelligenceを無効にすると、対応アプリが自動的にアンインストールされ、一部のマーケティング機能や集客支援ツールが使えなくなります。対応アプリにはShopifyメールやSearch and discoveryなど多くのストアで活用されているものも含まれるため、これらのアプリが使えなくなるのは大きな痛手といえます。今後さらに高度なサービスがShopify Network Intelligenceと連動する可能性も高く、機能面・収益面での機会損失が生じるリスクがあります。
4. プライバシーポリシーと利用規約の対応
Network Intelligenceを有効化するとマーチャントは顧客に対して明示的な開示義務が発生します。また販売を行う地域によっては個別に対応要件が発生する場合もあります。
顧客への通知要件
利用規約とプライバシーポリシーに以下の内容を記載する必要があります。
また、顧客の目につく場所にプライバシーポリシーへのリンクを設置する必要があります。
- Shipify消費者向けプライバシーポリシーへのリンク(プライバシーポリシーのみ)
- ストアがShopifyによってホストされていること
- ストアを訪問して購入する際にShopifyがユーザーのデータを処理すること(他の販売者やShopifyとのやり取りに基づいてサービスを提供するなど)
- 他の販売業者やShopifyとのやり取りから得たデータを、訪問者に提供するサービスに利用するために、訪問者の情報がShopifyおよび他国に所在する第三者と共有されること
場所に応じた追加要件
地域別対応要件
- 米国:顧客データの「共有」と「ターゲティング広告への利用」のオプトアウト機能&専用ページ設置、またプライバシーポリシーにオプトアウトページへのリンク設置
- EEA/英国/スイス:GDPR同意取得・cookieバナー設置+プライバシーポリシーページにShopifyプライバシー ポータルへのリンクを設置
※オプトアウトとはあるサービスや活動への参加を拒否したり、既に登録しているものを解除したりする行為を指します。特に、メールマガジンや広告メールの配信停止、個人情報の利用拒否などに用いられます。
自動プライバシー設定
上記のオプトアウトページやクッキーバナーの設置などについては設定>お客様のプライバシー内の自動プライバシー設定から自動設定することも可能です。
この設定をオンにするとストアが顧客の所在地に基づいて、地域のプライバシー法(例:GDPR、CCPAなど)に準拠したデフォルト設定を自動的に適用します。これにより、該当地域の顧客にはCookieバナーや同意管理などが自動表示されます。ただし、これで完全に法的義務を満たすとは限らず、事業者自身による確認やカスタマイズが推奨されます。
5. 対応期限はいつまで?
2025年7月25日に利用規約の改定が施行されます。
遅延による法令違反や機能停止リスクを回避するため、早期対応が重要です。
6. 有効にする場合の実際の対応フロー
- Shopify管理画面 → Settings > Customer Privacy でShopify Network Intelligenceの有効にする(初期設定は有効)
- 利用規約やプライバシーポリシーの更新
- 有効の場合、プライバシーポリシーにリンク&文言追加
- 米国向けの場合はオプトアウトページを設置しプライバシーポリシーにリンクを設置
- EU/UK向けにCookieバナー・同意撤回リンクを実装
7. まとめ:対応しないとどうなる?
- 無効化→機能損失、集客効率悪化のリスク
- 未対応→法令違反・ブランド信頼失墜・ペナルティの可能性
今回のShopifyの利用規約の更新はプライバシーポリシーの改訂などの対応が必要となる一方で、精度の高いマーケティング支援や顧客体験の最適化など、将来のマーチャントにとっては有益な機能を促進するためのものです。しっかりと内容を理解し対応することでShopifyを活用したビジネス拡大に繋げたいですね。
なお、本記事の対応方針等はコマースメディア法務の判断に基づく内容となります。最終的な対応方針の決定および対応については、各社法務担当のご判断のもとで進行するようお願いします。