EC市場の成長が続くなか、今後、成長の可能性が大きいのが、BtoB向けECです。
BtoC向けECサイトが増えているということは、それだけ商材や仕入れ先を探しているEC事業者も増えているということです。そういった事業者にとって、Web上で効率的に商材を探して仕入ができるBtoB向けECサイトは需要が高いものでしょう。
そんな市場の動きを受けて、これまでオフラインのみの取引だったがECサイト立ち上げを考えている、という卸問屋の担当者も増えています。また実際に、BtoB向けECサイトによって売上を伸ばしている企業も出てきています。
本記事では、特にアパレルに特化して、BtoB向けECサイトについて、その事例と特徴を解説します。
アパレルを支える「卸問屋」のECサイトの事例
BUYON(バイオン)
画像出典:https://buyon.jp/shop/main.php
韓国のソウルにある巨大アパレル問屋街・東大門の卸問屋のうち、約4,200社が出店しているECサイト。
【特徴】
- 日本にいながら現地の卸価格で仕入れることができる
- 商品価格はウォン表示、韓国銀行直レート
- 約60万点以上の圧倒的な商品数。毎日約1,200点以上の商品が更新されている
- 初期費用・預り金、月額費用、システム手数料がかかる
【支払い方法】
銀行振込
- 事前チャージを行い、チャージ金額内で注文ができる
SMASELL
株式会社ウィファブリック(2015年設立)が運営するアパレル在庫の卸売・仕入サイト。
【特徴】
- 約920社以上のサプライヤーと取引可能
- 1点もののセレクト商材、激安アソート商材、古着、生地、インテリアなど商材の幅が広い
- 欲しい商材を掲示板に投稿することでサプライヤーに提案してもらえる
【支払い方法】
クレジットカード払い/クロネコ掛け払い/銀行振込
TopSeller(トップセラー)
画像出典:https://top-seller.jp/www/lp
ドロップシッピング、アフィリエイト、Webマーケティングなどの事業を手掛ける株式会社もしも(2004年設立)が運営する、ネットショップ専門の商品仕入れサイト。
【特徴】
- 商品仕入からモール出店・ネットショップ構築まで込みのプラン利用
- 商品点数約25万点(アパレル以外の商材も含む)
- メーカーからの直接発送で在庫を持たなくて良い
【支払い方法】
クレジットカード/デビットカード/PayPal
アパレル卸問屋.com
出典:https://apparel-oroshitonya.com/
在庫処分に特化した買取業者の株式会社Shoichi(2005年設立)が運営する卸問屋サイト。
【特徴】
- 法人・個人事業主でなくても利用できる
- 価格・商品が公表されている
- 低価格の大量まとめ買いが中心
【支払い方法】
クレジットカード/銀行振込/代引/Amazon Pay
ReValue
画像出典:https://b2b.revalue.jp/top/guide
株式会社オークファンの子会社である株式会社SynaBiz(2015年設立)が運営するECサイト。
【特徴】
- 法人・個人事業主でなくても利用できる
- オークション形式で取引
- アパレルだけでなく、消費材から産業材まで幅広い品揃え
- 1点からバルク販売まで対応
【支払い方法】
銀行振込/クレジットカード(一括)
GOMEN Online
衣料小売店向け総合卸問屋、江綿株式会社(1949年設立)が運営する、小売店向けの会員制ECサイト。
【特徴】
- 老舗の卸問屋が運営するECサイト
- 実店舗もある
- 会員制サイトで、会員登録することで会員価格や商品ラインナップを見ることができる
【支払い方法】
ネットバンキング/銀行振込/代金引換/GQカード
ETONET(エトネット)
画像出典:https://etonet.etoile.co.jp/ec/app/auth/login
総合卸問屋の株式会社エトワール海渡(1948年設立)が運営する仕入サイト。
【特徴】
- 実店舗もあり、商品に関する相談ができる
- 約3,500メーカー、70万商品以上の取り扱い。毎日150点以上の新着商品あり
- リアルタイムの在庫数確認ができ、24時間商品確保が可能
- 最短当日出荷・最長7日の出荷保留に対応、出荷日まで何度も商品追加が可能
- 量に関わらず送料は一個口分
【支払い方法】
送金/代引き/エトワールクレジット/スマートプラン
プロルート丸光
総合衣料問屋の株式会社プロルート丸光(1951年設立)が運営する、小売店を対象とした会員制オンラインショップ。
【特徴】
- 老舗の総合衣料問屋が運営
- 実店舗もある
- レディースのアパレル商材が豊富
- オンラインストア限定商品あり
- Webでの仕入れ100円(税抜)につき1ポイントが貯まる
【支払い方法】
銀行振込/代引(本社出荷のみ)/専用クレジットカード/クレジットカード/預り金からの引き落とし/代行業者(海外のみ)
TOPWHOLE(トップホール)
アパレル事業の運営支援サービスを展開する、Bleaf株式会社(2016年設立)が運営している、アパレル専門仕入サイト。
【特徴】
- 会員審査なしで即日利用可能
- 画像の二次利用・受発注ができる
- 会費として月額3,000円(税抜)がかかる
【支払い方法】
クレジットカード/代金引換/NP掛け払い
AKF
画像出典:https://www.akf-japan.jp/
日本向け水着・アパレル専門の中国のメーカー AKFが運営する、小売店向け仕入れサイト。
【特徴】
- 水着がメインだが、それ以外にもさまざまな商品がある
- 会員制サイトで、会員登録をすると卸価格の確認、注文ができるようになる
- メールで見積もり、注文を行う
- 注文は一回あたり最低6万円以上、商品ごとにミニマムロット設定あり
【支払い方法】
銀行振込/PayPal/海外送金
BtoB向けアパレルECサイトの特徴
決済機能
BtoB向けECサイトで必要とされる決済に関する機能としては、次のようなものがあります。
- 見積もり
- 売り掛け
- 取引先ごとの決済方法設定
また、次のような機能があると、決済に関する業務を効率化できます。
- OCR機能
- まとめ請求書発行
OCRとは、手書きの書類をスキャンして電子データに変換すること。OCR機能があれば、紙の請求書や発注書もすべてまとめて管理できます。
管理機能
BtoB向けECサイトでの受注・配送を効率的に管理するために、次のような機能が重要です。
- 基幹システムとの連携
- 担当者登録
- 配送方法の複数選択
- 分割納品
卸問屋でもともと利用しているシステムがある場合、ECサイトとうまく連携して手間なく注文を管理できるようにする必要があります。またBtoB取引では、取引先の会社情報だけでなく担当者まで登録できると、注文を管理しやすくなります。
配送に関しては、商品によって配送方法を変えたり、分割で納品したりということが出てくるので、対応して情報を管理できるようにしましょう。
クローズドサイト機能
BtoB向けECサイトは会員制サイトの形が一般的で、会員登録の際に法人・個人事業主であることの確認を取り、確認が取れれば登録完了という形になります。サイトによっては、法人・個人事業主であること以外にも条件を設けていることもあります。
会員制サイトの場合、非会員にはサイトは表示されているものの、価格や商品ラインナップの詳細は表示されないという状態です。
さらに制限をかける場合、対象ユーザー以外にはサイトやウェブページそのものを表示しない、クローズドサイト機能を利用する方法もあります。クローズドサイト機能によって、限定的な取引ができます。
価格表示機能
BtoB取引ではひとつの商品に対する価格はひとつではなく、注文量や注文内容、注文金額、取引先によって卸価格が変動するのが一般的です。そのため、価格表示に関して次のような機能があると良いでしょう。
- ロット割り価格:注文量・金額に応じて価格が変わる
- アソート価格:商品の組み合わせに応じて価格が変わる
- 取引先ごとの価格設定
また、未入荷の商品については、価格だけでなく次回入荷日を表示することで、仕入れ担当者が計画を立てやすくなり、円滑な発注につながります。
さらにBtoB取引では、送料についても、注文量やサイズ、取引先によって細かく変わるため、柔軟に対応できる機能が求められます。
BtoB向けアパレルECサイト立ち上げに役立つサービス紹介
BtoB向けアパレルECサイトを立ち上げるときに助けになるのが、BtoB向けECサイトならではの機能を備えた受発注システムです。また、立ち上げだけでなく運用までトータルで支援してくれる、BtoB向けアパレルECの支援サービスもあります。
ここでは、そういったシステムやサービスを紹介します。
楽楽B2B
画像出典:https://raku2bb.com/
楽楽B2Bは、株式会社ネットショップ支援室が開発・提供している、企業間取引に特化したWeb受発注システム。次のようにBtoB取引に特化した特徴があります。
- 卸取引先ごとに掛け率・商品・決済手段の設定が可能
- 一括注文や取引先管理・分析など企業間取引を効率化する機能が多数
- AI OCR=注文書自動読み込み機能により、紙の帳票をスキャンするだけで処理できる
- 外部連携サービス多数(NP掛け払い・LOGI FORCEと自動連携)
【料金】
ライトプラン 初期費用10万円・月額費用5万円
スタンダードプラン 初期費用10万円・月額費用7万5千円
エンタープライズプラン 初期費用30万円・月額費用15万円
・AI OCRはスタンダード・エンタープライズプランで利用可能
boutiquestar
株式会社ブティックスターによる、アパレルECに特化したトータル支援サービス。次のような、ECサイト制作・構築・運営において必要になる業務をトータルで支援します。
- ECサイト制作・構築・デザイン
- ECサイトのブランディング
- 商品撮影・モデル撮影
- コンサルティング・Web解析
- 集客プロモーション
- 物流・コールセンター
アパレルECに特化しており、大手企業・有名ブランドの支援実績も多数あります。
Bcart
画像出典:https://bcart.jp/
Bcartは株式会社Daiが開発・提供している、BtoB専用のWeb受発注システム。次のように、BtoB独自の商習慣に対応した機能・特徴があります。
- 取引先ごとに販売価格・商品・決済手段の設定が可能
- クラウドサービスであり、最短3日で利用開始でき、コストを抑えられる
- 在庫連動、後払い決済、WMSなど外部サービスとの連携多数
【料金】
初期費用:8万円
月額費用:
ライトプラン(商品数500・会員数50)9,800円
プラン10(商品数1,000・会員数1,000)19,800円
プラン30(商品数3,000・会員数3,000)29,800円
プラン50(商品数5,000・会員数5,000)39,800円
プラン100(商品数10,000・会員数10,000)49,800円
プラン300(商品数30,000・会員数30,000)79,800円
NuORDER
アメリカのNuORDER社が提供しているBtoB向けアパレルECプラットフォーム。2,000以上のブランドと50万人のバイヤーに利用されています。
ブランドに対しては、オンラインでありながらリアルショップやショーのようにバイヤーに商品を紹介・販売する機会を提供し、小売店のバイヤーに対しては、オンラインを通じて効率的に自社の求めるブランドや商材を探し、仕入れをする場を提供しています。
- 360度画像、動画、店頭・サイトに並べたときのイメージを演出する機能などを備え、画像・動画内から商品をクリックしてそのまま購入してもらうことが可能
- ファッションショーや展示会などの企画あり
- バイヤーは24時間365日、モバイルからでも簡単に購入が可能
まとめ
本記事で取り上げた事例を見ると、老舗の卸問屋でも、BtoB向けECに参入していることがわかります。それだけ、小売事業者からの需要があることが分かります。
BtoB向けECサイトは、BtoBならではの商習慣に対応した機能が必要になりますが、そういった機能を備えたシステムやツールも登場しているので、便利に活用していきたいところです。
また、BtoB向けECサイトはBtoC向けと違い、デザインの良さはあまり求められません。それよりも、効率的に商品選定や発注ができるか、求める取引方法・決済方法が使えるかといった点のほうが重要です。
そういった点を相談したい場合は、BtoB向けECサイトでの実績がある制作サービスやコンサルティングサービスを探すと良いでしょう。