コロナ禍による外出自粛でECサイトの需要が一気に拡大し、EC通販事業者にとっては追い風となっています。
しかし事業が拡大し注文数が増加すればするほど、受注や出荷の業務負担が大きくなり手が回らない・・・そんなお悩みが出てきた事業者様も多いのではないでしょうか。
受注から出荷までのフローの効率化は、事業拡大と顧客満足度の向上を目指す上では必要不可欠です。そこで、受注/在庫管理業務を効率化するOMSや、出荷業務の負担軽減に繋がるWMSを導入する事業者様が増えています。
本記事では受注や出荷業務にお悩みを抱えている事業者様向けに、OMSとWMSのメリットや注意点、導入のポイントを解説します。
目次
EC運営においてよく見られる課題
EC運営に課題をお持ちの方、こんなお悩みをお持ちではないでしょうか?
- 手動作業が多く、受注作業だけで1日が終わってしまい施策に手が回らない
- 受注作業のオペレーションが複雑すぎて属人化している
- リアルタイムで在庫を把握できず「在庫ズレ」による機会損失や過剰受注が発生
- セット商品や熨斗の有無など複雑な出荷指示が正確に伝わらず、出荷作業でミスが多発
- 出荷までのリードタイムが長く、顧客満足度が下がっている
これらは、EC事業者様から寄せられることが多いお悩みです。
店舗数が増え事業規模が大きくなるほど、そして受注条件が複雑になるほど、手動作業では追いつかなくなっていきます。
そのため、適切なシステムを導入し、業務を自動化することが課題解決の鍵となります。
ECに関わるシステムの機能
まず注文〜出荷までの流れと、EC運営に関わるシステムを見ていきましょう。
ネットショップにてお客様の注文を受け付けた後、受注管理業務を行って倉庫に出荷データを受け渡し、出荷管理業務を経て、お客様に商品をお届けする流れとなります。
それぞれのプロセスに関わるシステムのうち、代表的なものは下記の3つとなります。
カートシステム
ネットショップで商品を販売するためのシステムで、ECサイトを構築する際に利用されます。また、ユーザーの注文はカートシステムを通して実行されます。
自社EC型(Shopify、MakeShop等)、モールEC型(Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング等)、リピート通販型、越境EC型など様々な特徴をもつカートシステムがあります。
OMS(受注/在庫管理システム)
OMS(Order Management System:受注/在庫管理システム)とは、ECの注文管理、在庫管理、商品管理などを一括化するシステムです。EC事業者にとっては、注文から商品お届けまでのプロセスを最適化する重要なツールとなります。
主にネットショップを複数店舗展開している場合に活躍するシステムです。複数店舗の商品情報や注文内容を一元管理できるため、OMSを利用することで作業効率が大きくアップします。
- 受注管理:受注登録や変更、キャンセルの管理
- 在庫管理:入庫、出庫、引当など
- 入金管理:入金状況、返金の管理
- 出荷管理:出荷指示・取消、手配、出荷実績の登録
- 商品管理:商品番号・名称など商品の基本情報の管理
- メール送信:注文確認メールや出荷通知メールの送信機能など
WMS(倉庫管理システム)
WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)とは、商品や資材が入荷してから出荷するまでの入荷・在庫・出荷・棚卸・帳票発行・ロケーションといった倉庫運営を一元管理するシステムです。商品の入荷・保管・出荷をミスなく・効率的に行えるようサポートする機能が備わっています。クラウド型、オンプレミス型がありますが、最近では自社でサーバの運用を行う必要がないクラウド型が主流です。
- 入荷管理:入荷スケジュールや入荷商品のラベル管理など
- 出荷管理:出荷予定や出荷実績の管理、出庫指示機能やピッキングリスト作成機能
- 在庫管理:在庫のロケーションや数、賞味期限や製造年月日などの情報を一括管理
- 帳票発行:在庫管理に必要なラベルや帳票、納品書や発注書の発行
- 棚卸管理:棚卸指示機能やスキャナによる簡単な入力など
OMSを導入するメリット
次に、OMSを導入することでどんなメリットが得られるのか紹介していきます。
複数チャネルの一元管理による作業の効率化
最大のメリットは、複数の販売チャネルを1つのシステムで管理可能になり、作業工数を削減できることです。 OMSを利用しない場合、3つの販売チャネル(例えばShopify、楽天市場、Amazon)で展開していると、チャネル数分だけ工数がかかります。情報を管理する際にそれぞれのチャネルに切り替えて作業することになるからです。
しかしOMSを導入して受注情報を一元管理すれば、チャネルを切り替えることなくOMSのみで管理が可能です。また、単純に効率化するだけでなく、OMSで複数チャネルの売上などを一括して比較・確認できるようになることもメリットとなります。
作業ミスの低減
OMSの導入により受注〜出荷データの作成までの業務が自動化されるため、人為的な作業ミスを防止することが可能です。
- 受注情報の取り込み
- 在庫の調整
- 受注ごとの入金確認
- 注文受付メールの送信
在庫管理の最適化
複数の販売チャネルにてバラバラに在庫管理されている場合、例えば「Amazonでは売り切れたが楽天市場の在庫が残っている」といった状況が発生し、売り逃しのリスクが発生します。他の店舗から在庫を回して販売するのが最適な方法ですが、手動によるリアルタイムでの在庫調整作業は運営担当者にとって大きな負担となり、ミスが発生しがちです。
一方、OMSを導入していれば店舗をまたいで在庫情報を一元管理することができ、特定のチャネルでのみ在庫切れとなって販売機会を逃すといったリスクを抑えることができます。また、手動管理で発生しがちな在庫設定ミスによる過剰受注も防止することができます。
このように、OMSの導入は機会損失を防ぎ、販売機会を最大化するうえでもおおいに役立ちます。
※OMS導入における注意点
一方で、OMS導入の際に注意すべき点も把握しておく必要があります。
-
オペレーションの整理や教育が必要
システムに合わせてオペレーションの整理・組み直しが必要となったり、システムを使いこなすためのスタッフ教育が発生します。 -
課題や目的を明確化しないと効果が得られないリスクがある
どのような課題を解決したいのか明確化されていないと、システム導入後に必要な機能が未搭載だったことに気づいたり、せっかく導入したシステムが定着しない場合があるため、注意が必要です。 -
導入コストや運用費が発生する
自社でOMSを開発している場合を除き、外部のベンダーが用意するシステムを利用する場合は、初期費用や運用費用がかかります。しかしながら、導入のコストと人件費を比較した場合、長期的にはOMS導入のほうが安く抑えられるケースが多いようです。またその他にも管理工数が減る、作業時間の短縮、人為的なミスの防止などの大きなメリットが得られます。
いずれにせよ、導入前にシミュレーションを行い、費用対効果を確認しておく必要となります。
WMSを導入するメリット
出荷作業の効率化
WMSでは、ピッキングリストを自動生成することができるので、作業者は効率的に商品を集め、出荷の準備をすることができます。 商品の受入れから保管、出荷までの一連の流れをトラッキングし、各作業の状況を一元管理することが可能です。これにより、作業者や管理者は一目で作業の進行状況や待ち状態を確認でき、必要に応じて手配や指示を出すことが可能となります。
リアルタイムな在庫情報の把握
WMSは在庫状況をリアルタイムで追跡し、表示する機能を持っています。これにより手動で在庫を確認したり、紙ベースで記録を更新したりする時間と労力を大幅に削減することが可能です。 また、在庫管理の精度も向上すると言えるでしょう。手動の在庫管理で発生しがちな人為的なミスや情報の遅延を防ぐことができます。
エラー低減とコスト削減
物流現場は作業の大部分を人為的に賄っている場合が多く、人件費が課題となっています。 システムの導入によって作業を平準化・効率化することで人件費を削減し、コスト削減につなげることも難しくありません。
※WMS導入における注意点
WMSの導入において注意すべき点も確認し、負荷をかけてもシステムを導入すべきかどうか検討しておきましょう。
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WMSの導入目的が曖昧な場合、期待した効果が得られないリスクがある
WMSにはさまざまなメリットがありますが、必要な機能や期待する効果は企業ごとに異なります。目的が不明瞭なまま導入すると、機能性が十分でないシステムを選んだり、効果が得られなかったりする恐れがあるため注意が必要です。 -
導入自体にコストと手間がかかる
システムの導入に伴い、導入コストの発生、およびオペレーションの整理やスタッフの教育の手間が発生します。
OMS/WMS導入パターン
OMSとWMSはいずれもメリットはあるものの、事業規模や要件に適したシステムを選択する必要があることがわかりました。
では実際に、ECの現場ではどのように導入されているのでしょうか。それぞれ適した導入パターンを見ていきましょう。
システムを導入していない場合
店舗数 | 1店舗 |
受注規模 | 受注数が少なく、複雑な受注条件がない |
出荷数 | 少なめ |
基本的に受注管理業務は手動となります。事業規模は小規模で、受注〜出荷までを自社で行っている場合が多いです。店舗数や受注数が増加するなど手動作業の負担が大きくなってきたら、OMSの導入を検討するとよいでしょう。また、出荷業務をアウトソーシングすることで売上アップ施策に専念する時間を捻出することも可能になります。
WMSのみ導入
店舗数 | 1店舗 |
受注規模 | 複雑な受注条件はない |
出荷数 | SKU数、出荷数ともに多め |
OMSの導入がないため、1店舗のみ且つ複雑な受注条件がないケースに適しています。SKU数や出荷数が多いなど、出荷業務を倉庫業者や代行業者に委託していて、そこでWMSが導入されているケースが多いようです。カートシステムとWMSがAPI連携可能な場合もありますが、基本的に受注管理業務は手作業で行うことになります。店舗数が増えたり複雑な受注条件が増加する場合は、OMSの導入を検討するタイミングです。
OMSのみ導入
店舗数 | 複数店舗 |
受注規模 | 受注数多め、複雑な受注条件があっても対応可能 |
出荷数 | SKU数、出荷数は少なめ |
カートシステムとOMSが連携されていることが前提となりますが、複数店舗の在庫管理や複雑な受注条件にも対応可能です。出荷業務は社内で行っていることが多いケースですが、出荷数が増加してきた場合は、代行業者にアウトソーシングやWMSの導入などを検討するとよいでしょう。
OMS・WMSをそれぞれ導入
店舗数 | 複数店舗 |
受注規模 | 受注数多め、複雑な受注条件があっても対応可能 |
出荷数 | SKU数、出荷数ともに多め |
OMSとWMSをそれぞれ独立したシステムとして導入しているパターンでは、OMS/WMSのシステム間の連携がポイントとなります。もし連携可能なデータが少ない場合は、受注担当者がWMSの仕様に合わせてCSVを修正するなど手動作業が発生するため、自動化される部分が少なくなり、導入メリットも小さくなります。
OMS/WMS一体型を導入
店舗数 | 複数店舗 |
受注規模 | 複雑な受注条件があっても対応可能 |
出荷数 | SKU数、出荷数ともに多め |
OMSとWMSが一体型になっているパターンです。1つのシステムのためシステム間の連携を考慮する必要がなく、よりシームレスな運営ができ、注文〜出荷までのフローをほぼ自動化することが可能となります。
※注意点
OMSの導入だけでは、EC運営における全ての業務効率化やミス防止につなげることはできません。現在抱えている課題を洗い出し、それがOMSだけで解決できるのか、WMSも導入したほうが良いのかを確認しましょう。もしOMSだけで解決しない場合は、WMSも並行して導入をする、出荷作業を物流代行業者にアウトソーシングする、などを検討することをおすすめします。また、更にフローの自動化が可能な「OMS+WMS一体型」のサービスについても検討いただくとよいでしょう。
OMS/WMS導入時のポイント
OMSやWMSを導入するにあたり、自社に合った最適なシステムを選ぶためのポイントを4つお伝えします。
事業規模にマッチしているか・抱えている課題を解決できるか
事業規模や抱えている課題にマッチしたシステムであるかの確認は必須です。事業規模にマッチしないシステムを導入した場合、コスト面で割高になってしまうリスクがあります。また、OMS・WMSのいずれもシステムによって機能や効果に違いがあるため、確認してから導入しないと「抱えている課題が解決できなかった」という事態に陥りかねません。事前に課題を整理し、課題解決に繋がる機能を持ったシステムかどうかの確認は必ず行いましょう。
使用しているシステムとの連携は可能か
導入予定のOMSが、現在出店しているモールやカートシステムと連携ができるかどうかは非常に重要なポイントです。また倉庫業者や出荷代行業者を利用している場合は、業者が使用しているWMSなどのシステムと連携ができるかどうか必ず事前に確認するようにしましょう。いずれもスムーズな連携ができない場合は、余計な費用やオペレーションが発生し、結果的に業務効率化が実現できない状態になりかねません。
すでに使用しているシステムのどの部分が変更可能で、どの部分が固定なのかを整理し、動かせないシステムを起点にして他のシステムの導入・変更を検討することが重要です。
現場スタッフにとって使いやすいシステムか
システムの機能が豊富であることは魅力である一方、複雑であるほど現場スタッフが使いこなせなくなってしまうリスクもあります。管理画面の使い勝手が良く、わかりやすいものを選択すると、導入後もスムーズに進められます。
システムの導入コストを回収できるだけの費用対効果はあるか
OMSにおいて、受注数が少ない場合や複数店舗運営していない場合には、システムによっては割高となってしまう場合もあります。WMSにおいても同様で、導入に伴うコストを事前に把握し、実際に導入した際のコストシミュレーションを必ず行いましょう。
まとめ
EC市場の拡大によってチャネルが多様化した現代においては、OMSやWMSなどのシステムによって一元管理する方法が現実的となっています。
OMSやWMSの選定にあたっては、事業規模および課題と要件を明確化したうえで、もっとも適したシステムを選ぶことが重要です。
当社では、主にOMS/WMS一体型のLOGILESS(ロジレス)を利用しています。
LOGILESSについては、下記の記事にてより詳しく解説していますのでご確認ください。
一体型OMS/WMSで自動出荷を実現!EC運営担当だから話せる導入メリット
また当社では、様々なECサイトの運用実績がありますので構築・運用サポート・コンサルティングをお受けできます。EC事業者様の現状のシステム環境と抱えている課題に応じて、最適なシステム環境のご提案をさせていただきます。
EC運営に課題のお持ちの事業者様は、ぜひお気軽にご相談ください。