楽天市場で注目されているターゲティングディスプレイ広告(TDA)。バナーの登録数が多く面倒で配信をしていない店舗や、一度なんとなく配信して効果を感じられずにやめてしまっている店舗も多いと思います。本記事では初心者向けにTDAの基礎的な解説と出稿方法、パターン別の運用方法をお伝えします。
※こちらの記事は2022年8月時点の仕様を記載しており、今後のアップデートで変更されていることがあります。
【この記事のポイント】
- TDAの特徴や仕様が理解できる
- TDAの出稿方法がわかる
- 具体的な運用方法の参考がある
TDAとは
TDAとはTargeting Display Advertisementの略称で楽天市場出展者用の広告メニューです。店舗側で配信対象をセグメントしてバナー広告を配信する仕組みとなっており、「 閲覧履歴画面 」「 お気に入り画面 」「 ランキング画面 」「 レビュー画面 」などへバナーを掲載することができます。
料金はインプレッション課金となっており、広告がユーザーに表示されたタイミングで費用が発生します。明確な基準としては広告が表示されバナーの50%以上が1秒以上ユーザーに表示された時に1インプレッションの扱いとなります。
インプレッション費用に関しては2022年8月から¥0.75〜¥10.00の入札方式になっており、入札単価が高いほど広告が表示される仕様かと思われます。
また、TDAではキャンペーンの設定(広告の登録)時に予算の上限を登録する必要があり、最低予算が5万円〜となっております。請求に関しては実績分のみなので、設定した予算より請求額が少ないこともあります。
TDAの特徴
TDAの特徴としては配信するユーザー層やタイミングを店舗でコントロールできる点です。選択できるセグメントは下記の通りであらゆる組み合わせをすることができます。セグメント概要ごとに上限が定められておりますので無制限に選択できるわけではありません。
◆セグメント項目 | ◆セグメント概要 |
会員登録情報 | ・年齢(15-19歳、20-24歳などの5歳刻み) ・性別 ・会員ランク ・居住地域 |
閲覧履歴 | 第一階層ジャンル(食品、ホビーなど) └第2階層ジャンル(卵、総菜など) |
イベント興味 | ・イベント(お中元、お歳暮など) ・大型イベントにおける最大買い回り数(過去1年間) └買い回り1~3店舗 買い回り4店舗以上 |
購買履歴 | 第一階層ジャンル(食品、ホビーなど) |
ユーザー傾向 | 優良会員 |
3か月以内3回購入 |
主要9ジャンル |
ライフステージ |
6ジャンル(未既婚、子供有無など)※推定情報 |
自店舗来訪・購入履歴 | ・自店舗来訪履歴 ・自店舗購入履歴 ・Rakuten AIris |
なお上記セグメントも<かつ>と<または>にグループが分かれており、<かつ>は選択するほど配信範囲を狭め、<または>はorの意味で配信範囲を増やす仕様となっています。
<かつ>グループ
性別、年齢、会員ランク、大型イベントにおける最大買い回り数、ユーザー傾向、自店舗来訪・購入履歴、Rakuten AIris
<または>グループ
購買履歴、閲覧履歴、3か月以内3回購入
※例)下記セグメントでの配信
<かつ>:性別(男)、年齢(20-24歳)
<または>:購買履歴、3か月以内3回購入
◇配信先
①購買履歴 < 性別(男)、年齢(20-24歳)
②3か月以内3回購入 < 性別(男)、年齢(20-24歳)
また、TDAはキャンペーン期間(広告配信時期)をある程度自由に設定できますが、下記のような制限が少しあります。
- キャンペーンの登録日から6営業日以降の日程
- 1日以上の配信
- 配信開始時間は10:00 or 20:00
- 配信終了時間は09:59 or 01:59
上記の条件のもとであれば、同じ期間にいくつも配信することができるため、お買い物マラソン期間中に同じセグメントで2パターンの広告素材の配信といったABテストも可能です。
加えてTDAでは配信方式は「ターゲティングパッケージ」と「ノンターゲティングパッケージ」と2種類あり、さらにターゲティングパッケージでは配信ボリュームを「アクセス量に合わせて最大配信」と「予算を日ごとに均等配信」の2つから選択できます。
前者では残りの予算を無視して楽天市場のアクセスに合わせて最大露出をし、後者は文字通り設定した予算と配信期間を日割りして1日の最大配信数を制限する方法です。
ノンターゲティングパッケージはセグメントができない代わりにインプレッション単価が安く、とにかくユーザーにリーチしたい場合などに検討されます。
TDAの注意点
TDAの注意点としてまず、レポートがビュースルーコンバージョン形式であることです。ビュースルーコンバージョンとは、広告が表示されクリックしなかったユーザーが、その後、別の経由でサイトを訪れて購入(CV:コンバージョン)することです。
ビュースルーコンバージョンでの広告効果の判断はかなり意見が分かれます。そのため、広告レポートだけでなく、掲載した商品の売り上げの上昇率なども合わせて考え、店舗ごとに判断基準を作っていくことが重要です。
2点目は、ターゲティングパッケージを選択したさいにセグメントの幅が広すぎるとインプレッションが多く発生し、予算を直ぐに消化し広告の配信停止される可能性があることです。
また、配信設定を「予算を日ごとに均等配信」としていた場合、予算上限での配信停止は起きないのですが、5のつく日や0のつく日など楽天市場へのアクセスが一気に増えるタイミングでも配信数が変わらないので、機会損失している可能性が高いです。
TDAのセグメント設定画面で配信範囲の目安を見ることができるので、参考にしながら設定しましょう。
3点目は入稿するバナー数が多く、広告審査が厳しい点です。必要なバナーサイズは下記4点となり4サイズとも入稿必須となっています。レギュレーションも厳しく細かい規定がたくさんあります。入稿画面でサンプルPSDデータが提供されているため、まずはサンプルに従いながら作成していけばいいのですが、細かい点で審査が通らないこともあるので、余裕をもって審査を受けることをオススメします。
- 1,280px×200px
- 880px×320px
- 400px×800px
- 480px×360px
レポート仕様
TDAのレポートには、利用した広告費に対しての売り上げで広告を評価するROAS(Return On Advertising Spend)という計算方法が用いられ、広告の表示から720時間以内の購入がROASに含まれています。
ROASの計算方法は「売上÷広告費×100(%)」となっており、例えば100万円の広告費に対して200万円の売上があったなら、200万円÷100万円×100=200%という計算となり、広告成果は広告掲載商品と別の商品で売り上げが立った場合も広告効果に含まれます。
加えて前述にもある通り、広告経由の売り上げの判定基準はビュースルーコンバージョンとなっており、ユーザーへの広告表示から720時間以内の購入が広告経由の売り上げ扱いとなります。
広告の良し悪しを判断する1つの指標として確認いただきたいのがCPC(Cost Per Click)です。TDAのレポートでは広告の利用実績額÷クリック数で計算されますが、このCPCが低いほどアクセスに貢献しているということなので、広告効果を明確に判断できます。
TDAの設定方法
RMSの広告(プロモーションメニュー)からターゲティングディスプレイ広告(TDA)を選択しTDAの管理画面に移行し、「キャンペーン」>「新規登録」の順にクリックしキャンペーンの新規登録を行います。
キャンペーン新規作成は配信設定がおもな登録内容となり、キャンペーンの期間や予算、セグメントなどを登録します。
なお、掲載数には限りがるため登録タイミングによってはキャンペーンの登録ができないことがあります。現在枠が埋まりやすくなっているため担当ECCに次月の枠を登録できるタイミングを聞いて設定することをおすすめします。※2022年8月時点
キャンペーン名:任意の項目
キャンペーン期間:キャンペーンの開始日、終了日
予算:1回のキャンペーンの上限金額 ※最低5万円
配信ペース:「アクセス量に合わせて最大配信」or「予算を日ごとに均等配信」
パッケージ種類:「ターゲティングパッケージ」or「ノンターゲティングパッケージ」
設定URL:広告のリンク先「商品ページ」or「店舗トップ、カテゴリページ、GOLD」 対象セグメント:セグメントの設定
キャンペーンの新規登録が完了すれば次は画像の入稿になります。画像の入稿はキャンペーンの一覧ページにて登録したキャンペーンの「入稿」から行います。
入稿をクリックすると画像4枚とURLを入力する欄がありますので、画像のアップロードとURLの記載をし入稿すると完了になります。
修正依頼は通常の市場枠と同じように楽天市場からメールでお知らせが来ますが、TDA管理画面からも確認が可能です。原稿欄が「審査完了」になっていれば問題なく登録が完了したことになります。
パターン別運用方法
TDAの配信方法は店舗の戦略によって様々あると思いますが、本状では数パターンご紹介させていただければと思います。基本的にターゲティングパッケージで配信範囲を絞り込んだ方が効果が高いことが多いので、ターゲティングパッケージでの運用例となります。
■とりあえずやってみたい
まずはとりあえずやってみて効果を見てみたい方は、ROASを高くするために一度接点を持っている顧客への配信がオススメです。
最も簡単な設定方法としてはTDAの配信セグメントを「過去閲覧顧客」か「過去購入顧客」に設定することです。こちらで一度自社の店舗を閲覧した方や購入者へリターゲティングの配信することができます。
リターゲティング型の広告はROASが高い傾向にあるので、まずは試しにやってみても良いかと思います。
■新規獲得が狙い
新規ユーザーへの露出を狙いたい場合でも、自社の顧客層をRMSで確認してセグメントはある程度絞り込むことをオススメします。自社の顧客層はRMSレフトナビから「データ分析」>「5.販促効果測定」>「顧客分析レポート」から閲覧することができますので、ボリュームゾーンは抑えてセグメント設定をしていきましょう。
さらにお買い物マラソンや楽天スーパーセールなどの大型イベントに合わせて枠を確保して、専用の商品や特集ページのURLを入れると良いかと思います。
また、TDAのセグメントの中には指定した商品の購買属性をもとにAIが配信対象を選定するRakuten AIrisというものもあります。商品URLでの入稿されている時はこちらのセグメントを活用してみてもよいかと思います。
■高ROASで運用したい
TDAの効果を最大限高める方法として、TDAからしか流入できない企画を立てるという方法もあります。サーチ非表示で通常価格より安くした商品や、非表示クーポンを掲載したGOLDページなどをリンク先とし、バナーに「このバナーを見た人だけのキャンペーン」といったクリエイティブで訴求する方法です。
この方法は確かにTDAのクリック数やROASは上がりやすいのですが、キャンペーンをバナーを見た人限定と対象者を制限しなければいけないので、バナー経由限定とせず同じ内容のキャンペーンを対象を限定せずに行ったほうが店舗全体の売り上げは多くなる可能性が高いです。
また企業の方針で特定ユーザーだけのキャンペーンができない場合もあるので実行の前に検討が必要です。
TDAのまとめ
最後にTDAの注意点や概要をまとめます。うまく利用すれば売り上げアップの強力な武器になるのでうまく活用していきましょう。
■費用面
料金はインプレッション課金
インプレッション単価は¥0.75〜¥10.00の入札方式
1キャンペーンの最低予算は5万円〜。ただし請求は実績分のみ
■仕様面
配信タイミングはある程度自由に設定可能
配信対象を店舗でセグメントができる
広告効果はレポートでいつでも確認が可能
レポートはROAS方式で広告の表示から720時間の購買が広告経由の売り上げとされる
■注意点
広告効果の判断が非常に難しいので店舗で判断軸を定める
審査が厳しいので早めの入稿を徹底する