オリオンビール株式会社は沖縄県に本拠を置く、日本の大手ビールメーカーです。 ビール以外にもチューハイなどのアルコール飲料や雑貨やアパレル商品も展開する当社。EC事業への注力を決定した2020年に弊社に支援をご依頼いただき、 その後3年間の内容をご担当者のマーケティング本部 部長 上符さま、マーケティングコミュニケーション/EC部 EC課 小橋川さまに改めて詳しくお話を伺いました。
EC事業への注力
──まずはEC事業に注力しようと思った当初はどのような状況だったのでしょうか。当時オリオンビールの売上は沖縄県内がほぼであったため、沖縄県外の売上を伸ばす新しいチャネルとしてECを本格化する運びとなり、プロジェクトが2020年に始まりました。
実はコマースメディアさんと一緒に事業を行う前に(2019年時点)もともとECサイトはあったのですが、銀行振込みがメインの古いECサイトで、取り扱いも3商品のみ、注文も月に数10件あるくらいの細々としたサービスでした。
──EC事業を強化する上で当時ネックになっていたことはございますか?ECプロジェクトのスタートと同時にECチームが立ち上がりましたが、物流基盤もなくECのシステム・デジタルマーケティングがわかる人もいない状況だったのでインハウスの体制を整えながらノウハウのある協力会社(パートナー)と一緒に進める構想で最初からいました。
私は前職でも1人でEC事業を任されて、パートナーとオペレーションを構築してEC事業を運営していたのでイメージは当初から出来上がっていました。
そして、当時自社でも色々と調べてリソースが無い状態のスタートで選ぶのにベストなカートがShopifyと結論付けておりましたので、Shopify expertsの会社からパートナーを選定する運びになりました
──当時から複数社Shopify expertsはいましたが弊社にご依頼を決めた理由は何でしょうか?当時、Shopify関連で発信している人や企業が複数おり、みなプラットフォームの概念やトレンドについて話している人が多いなか、井澤さんは地に足のついた商売の話をしている印象があり、それが大きかったです。自分でECを運営した経験があって、その上でShopifyを選んでいたので信頼ができると思ったんです。
他にも、当時のShopifyの事例でよくD2Cの話が多かったのですが、コマースメディアさんは「ゴーゴーカレーさん」などの一般流通しているメーカーさんの支援実績が多く、Amazonや楽天市場といったモールの運営代行やコンサルティングも行っていたため、ECの市場を全方位で支援できる点は非常にポイントとなりました。
こういった他のパートナーさんには無い対応範囲の広さが決め手となり、ご依頼を始めました。
EC事業の開始
──当初描いていたECの戦力はどのようなものでしたか?当時から目標が非常に大きいものだったので、最初からモールへの展開や定期通販などは行っていくつもりでしたが、モールは既存の流通・小売店・取引先との兼ね合いがあるので、まずはオペレーションの構築や自社サイトのリニューアルを行い、サイトの機能や販路を徐々に追加していく算段でいました。
また、ビールメーカーは限定商品や新商品を定期的に出して、市場を刺激しながら売上を作っていくのが通例なんですが、当時のオリオンビールはあまりそういった商品を出してませんでした。しかし、ECの開始と同時期にオリオンビールでも毎月色んな商品を出していくことが決まり、ECやPRにおいて追い風なタイミングでした。
──その後、2020年の7月5日(名護の日)にサイトオープンしEC事業が本格化しましたが、オープン後はいかがでしたか?サイトの構築に関しては特に問題なく順調に進めていただいたので安心しておりました。加えて、OMSの導入や物流倉庫とのつなぎこみも行い、受注処理はほぼ自動化するなど、最低限のリソースでスマートに運営できるようにシステムを整えてもらえたのでとても助かりました。
弊社のようなメーカーは社内の仕組みがEC用になっていないので、社内との調整にどうしても時間がかかってしまいます。サイトやオペレーションの構築などをコマースメディアさんにお任せできたので、社内の調整業務に集中させてもらえたのは非常に良かったです。
また、スタート当初の商品は30SKUでしたが、新商品や仕入れ品などでSKUがどんどん増えていって商品ページや特集の制作に手間がかかるところだったんですが、そこをコマースメディアさんのおかげで素材を準備すればしっかり商品ページを作ってもらえる体制にできました。スケジュールが厳しい中でもご対応いただけて、販売機会損失が無く売上にもかなり貢献いただきました。
──構想にあった定期通販の機能はいつ頃実装されましたか?オープンして2か月後くらいから早速定期通販を始めました。もとからコマースメディアさんから当時のShopifyはサブスクが得意ではないのはお話いただいて理解はしていたのですが、頒布会形式で毎月中身が変わる形でアプリケーションの設定や調整、倉庫とのオペレーション構築をコマースメディアさんに行っていただきました。
当時は海外製のアプリケーションしかなく消去法で利用していましたが、今では日本のアプリケーションに変更しています。そのシステムの変更もコマースメディアさんに行っていただきましたね。
ECモールの出店開始
──その後モールの出店について当時のお話をお願いします。自社サイトをオープンしてから半年後くらいたち、運営も安定してきたころに楽天市場に出店をしました。どのモールから出店するかもコマースメディアさんにアドバイスいただき、市場規模と商品の相性、既存の流通の影響から考えモール第1号は楽天市場にしました。
Amazonも気になっていたのですが酒販店様とのカート争いが発生する可能性もあったので、商品がもっと増えてきて既存の流通に影響しないことを担保できるようになってからにしようと思いこのタイミングでは出店を見送りました。
楽天市場の店舗構築やデザイン、初期設定、OMSとの繋ぎこみなども出店に関することは全てコマースメディアさんに依頼出来たので、他の構築会社と再度コミニケーションし直す手間が省けて良かったです。
──楽天市場に出店してみていかがでしたか?自社ECはオリオンビールのファンが集まるのでどういうものが売れるのかはオリオンビール側で分かりますが、モールは商品やブランドを知ってはいるが買ったことが無い、たまに買うといったライトな層のお客様が集まっています。
他ブランドとも比較されるこの市場の中で、どうやってオリオンビールの商品を目に止めてもらいお買い上げいただくかは非常に難しい問題でした。
自社ECの横展開では上手くいかないことは容易に想像できたので、ここでもコマースメディアさんと一緒に戦略を考えていき、モールにはまる構成の商品をどんどん投下してトライアンドエラーを繰り返しました。
また、商品はあってもモールでの売上実績の問題で、最初はいい広告枠が抑えられない問題もありましたが、最初の父の日でコマースメディアさんと一緒に仕掛けた商品が跳ねてから、順調に枠も抑えられるようになりました。
父の日ギフト商戦で激戦の5月に、楽天市場のビール・洋酒ジャンルのリアルタイムランキングデイリー1位を獲得し、2023年5月度のSHOP OF THE MONTHも獲得しました。
──今の楽天市場の運営はいかがでしょうか?
現状はありがたいことにリピーターさんもついてきて、新商品や限定商品でも売上が立つようになってきましたが、変わらず父の日やお歳暮といったビールメーカーで重要な商戦には専用の商品を用意していきたいと思っております。
楽天市場ではRPPやクーポンアドバンスといった運用型の広告や、市場枠といったディスプレイ型の広告など、広告の種類が非常に多くありますが、年間の予算調整や出稿枠の選定、クリエイティブの作成、入稿スケジュール管理などもコマースメディアさんにお願いが出来ているので、我々がすべき商品やお客様に向き合う時間が作れて感謝しております。
他にもシーズナルの商品は必ずその日に届けなければいけないため、専用商品の入庫から出荷までセンシティブで複雑なオペレーションが求められます。その点もご協力いただき、必要な在庫数算出やアッセンブリ数の指示などバックヤード側もかなり細かくコマースメディアさんにアドバイスいただけるので、事故なく運営を回すことが出来ております。
在庫を多く持ってくださいという話で終わらすのではなく、物流側の作業スピードやキャパシティを把握して、このタイミングでこの商品に関してこの数量を確保してくださいと具体的な支援をしていただいたのは非常に助かりました。
更なる販路拡大
──その後モールの展開はどのような優先度で出店されたのでしょうか?体制を整えつつ市場の大きさ順に出店していった形で、まずは楽天市場出店から半年後にYahoo!ショッピング、その1年後ほどにauPayマーケット、Dショッピング。数か月後に様々な調整が終わりAmazonの順です。
楽天同様に出店時の店舗構築やデザイン、初期設定などはコマースメディアさんにお願いしましたので、かなり早いスパンで市場を網羅できたと思っております。
他モールでも基本的な運営やセール時の企画運営、広告運営をコマースメディアさんにお願いさせていただきましたが、当時のYahoo!ショッピングはPayPayモールもあり、母体からの投資フェーズだったということも相まって一番最初に設定したYahoo!ショッピングの目標売上は早めに達成できたりもしました。
──楽天市場との違いはどのように感じましたか?直近のYahoo!ショッピングやauPayマーケット、Dショッピングはキャリア色が非常に強く、キャンペーンがちょっと独特なような気がします。そのため楽天市場の完全横展開だけでトップラインをあげるのは難しく、価格の設定やセールやキャンペーンを行うタイミングもモールに合わせてあげる必要があります。
この当たりのモール毎のキャンペーンのスケジュール管理や、どのモールでどういった施策をいつ行うのかなどの企画やスケジュール管理、実行もお願いしておりますので、チーム一丸で他販路展開のバランスをとっています。
他販路展開後の現状
──現在のEC事業を過去と比較すると何が違いますか?販促リソースのバランス調整もありますが売上は自社(定期/単品)とモールで4:4:2くらいの比率に現在はなっており、全て右肩上がりで成長してきています。他の食品カテゴリのメーカーさんの多くはモールの方が比重が大きくなることが多いのですが、モールもしっかり運営しながら自社をメインとすることができました。
モールは100SKU程の展開ですが、自社ECはオープン当初の20倍弱の500SKUほどに増えておりサイトとしてもかなり成長していますね。
スマホの画面で見れる範囲・商品数は限られていて、たくさんの商品がある中でコマースメディアさんには上手く制作していただいていると感じております。
他にもオープン当初には構想に無かった他ブランド様とのコラボ商品もかなり売れており、嬉しい誤算となっています。初回は恐る恐るやっていたのですが商品が即完売して、次の年には5倍の在庫量、次の年は更に倍の量と反響がどんどん大きくなってきております。
コラボは短期的に売上をグッとあげる施策になるので、在庫の管理や出荷オペレーションなど非常に大変なのですが、コマースメディアさんのアドバイスもあり大きな事故もなく毎年スムーズに商品を出荷できております
たくさんのモールに出店しながら自社ECの運営も同時におこなうのは非常に負荷が高いので、本当にありがたいパートナーです。
EC事業の目指していく方向性
──今後はコマースメディアへ期待していることや、自社で目指していることは何でしょうか?オリオンビールらしく「沖縄を楽しんでもらう」ことに拘っていきたいと思っております。そのため、既に進行中ですがビールを売るだけではなく、沖縄の知る人ぞ知る良い商品をオリオンビールのサイトで知っていただき購入できるようにしていきます。
しかし、お土産屋さんにあるような物だと今時色んなECサイトで購入できるので、沖縄のこだわりの特産品を扱っていくつもりです。これにより、まだまだ知られていない沖縄の良さや商品をオリオンビールから発信していきたいと思っております。
コマースメディアさんにはかなり至れり尽くせりにサポートしていただいてますので、現状のサービスレベルを保ちつつ、より新しいことに一緒に挑戦していければと思っております。
また、コマースメディアさんは、良いものを持っている地方の小さなメーカーさんや、ローカルにとどまってまだ知られていないようなメーカーさんを世の中に広めていく役割をになってほしいと思ってます。
コマースメディアさんが弊社のお客様を理解して、都心にいながら沖縄のビールが飲みたくなるような企画や商品の提案をしていただけるのが本当に嬉しく思っていまして、それを色んな地方の企業にも提供してほしいのです。
これからEC市場の成長もゆるやかになっていく中で、ECで新しい発見・出会いを広めたり、普段コンビニやスーパーで手に入れられない商品を見つける楽しさを世の中に広げていってほしいですね。